評  論
建築士会とは何をするところか

 一人の一級建築士によって日本の建築構造の安全神話は崩された。

 彼が設計し建設されたマンションは震度5以上の地震が来ると倒壊する可能性があるとされていて、今、日本では、特に東海・南海地震等大きな地震が近く起こると予想されているから深刻である。
 現に、先の阪神淡路大震災以降でも、北九州や新潟で地震が発生し、その度に建物の被害が出たことは記憶に新しいし、また海外でも地震に伴う大きな被害が伝えられている。

 多くの人達が地震は怖いものだと知っている。
 そんな中で、今まで日本の建築界はこの地震からどうやって建物財産を守るかに取り組んできた。建築基準法の構造に関する規定などは、まさにいつ起こるとも、どの規模で起こるともわからない怖い地震との戦いの歴史である。
 その努力は一人の建築士の自分勝手な都合や理由によって崩されてしまった。

 私が建築士を目指した頃は、医者、弁護士と同等の資格が建築士だと教えられてきた。つまりそれぞれが国家資格であるという枠組みの中で、同等という考えがあったからであろうが、そう簡単に取得できるものではないという教えでもあった。
 ところで、医者や弁護士はそれぞれ医師会や弁護士会に所属している。何かしらの不祥事があると、それぞれの会から除名や処分が発表される。所属を外されると言うことはものすごく不名誉で、その後の職務に響く、むしろもうその世界では仕事はできませんよと言う宣告をするほどの権限を持っている。逆に言えば、所属していることはステータスであって、資格を持っている以上はその会の保護下にあると言ってもいいだろう。

 ところで、建築士にも建築士会というのがあって、都道府県ごとに設立されている建築士会をもって組織し全国的には日本建築士会連合会という団体がある。目的は、建築士の品位の保持及びその業務の進歩改善を図り、広く社会公共の福祉増進に寄与するとしている。
 先の医師会や弁護士会のようにはいかないようで、建築士会の会員には権威づけされた団体ではなく、どちらかというと親睦団体に近いものがある。

 建築士を専門家として扱い、建築士の品位の保持及びその業務の進歩改善を図るとするなら、今回の事件を機にして建築士会は抜本的な改革を行い、建築士にとって権威ある団体となることが国民の信頼を得るよき機会であったとしなければならないと考える。
 つまり、建築士の品位を保持しているかどうかは単に研修などの受研で判断するのではなく、平素の言動も含めた判断が必要であり、旧態依然の行政庁任せではいけないはずである。
 建築士と名乗る以上は全ての建築士は建築士会に所属し一丸となって信頼回復に努めるべきである。
 今回の事件は単に一人の建築士の問題ではないはずで、それほど建築士そのものの信頼を失墜したと真摯に受けとめるべきである。

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